「本屋の新井」さん。
いきなり名刺を差し出されたような、シンプル且つパンチのあるタイトルに何か惹かれるものを感じ、この本の著者である「新井さん」がどのような方なのか、興味を持って本を開きました。
新井さんは、現役バリバリの書店員ですが、
「芥川賞、直木賞よりもこの著者が設立した『新井賞』で紹介された本の方が売れる。」という事実にまず驚かされました。
それだけに留まらず、様々な出版物に書評を掲載されたり、マスメディアに出演されたり、または、作家さん達を招いてのイベントを企画したりと、その活躍は枚挙にいとまがありません。
斜陽と言われつつある出版業界の先端である書店。
そこで何ができるか考え自問自答した答えが、多種多様なテクノロジーを利用し、
ネットワークの枝葉を伸ばし、より多くの人たちにアナログの最たる「本」というものを発信する事に至ったのには、アイロニーすら感じましたが、当の新井さんはそんな気もなく、書店で自分がやれる事に毎日心を砕いて頑張っています。
そして、そんな一人の書店員として、この本が書かれている事に好感が持てました。
本文は、エッセイと言うよりもブログのような短さで、日常での出来事とそれに絡めた「本」を紹介しています。
その短さに、「あともう少し読ませて!」と物足りなさも感じるところもありましたが、その距離感の近さと軽妙な語り口が新井さんの味なんだと思います。
書店に骨を埋めるぐらいの筋金入りのビブリオフィルな人かと思いきや、
「本屋の仕事に特別な意味を見い出せてないし、無理に続ける気もない。」と言う新井さん。
「本は日用品。」とも仰ってますが、この本を読んで、「本」はいつも手に取るものであり、その温もりを感じられる日常でありたいと、痛感しました。
ありがとう、新井さん。 そして、今日もうんと頑張ってください。
著 者:新井見枝香
出版社:講談社