「病は気から」
古くから語り継がれているこの言葉ですが、そうだろうとは重々承知していても、
その根っことなっている「気」の部分がかなり根深かったりして、自分でどう解決
していって良いのか分からないからこそ、「病」は厄介なものなんだと思います。
現代の社会において、誰もがストレスや、そこからくる疲れをため込んでしまって
いるのが当たり前になっており、そんなものと縁の無い人は、人里から離れた所で、
誰とも接する事のない仙人のような暮らしを自ら望んでしている人ぐらいしかいな
いのではないかと思ってしまいそうになります。
その考えの答えがYESであり、NOであるという事が本書では書かれています。
今のコロナ禍の現状では、ストレスの内容も変容しつつあります。
そこに着目し、「病」になる前の疲れの元になっている「気」の部分に気づき、
「いやし」ていこうというのが、本書の趣旨となっています。
本書では、コロナでおこもり生活になってしまった女子へのアプローチの形を取っ
ていますが 、在宅勤務者だけではなく、疲れを感じている老若男女の誰にも当ては
まるセルフコンパッションの仕方をイラストを交えて易しく説いており、読んでい
るだけでも癒された気持ちになりました。
著者は精神科医の方なので、医学的な側面から日常生活の様々なシチュエーション
でのアドバイスがなされています。
疲労回復にと思ってやっていた事が、かえって疲れを助長してしまっていたり、
ほんの少しの意識の変化でこうも日常が変わるのかと、目から鱗なお話が多かった
です。特に生活の基盤とも言える睡眠や食事の項は、大変参考になりました。
WHO(世界保健機構)では、「健康」とは、「肉体的にも、精神的にも、社会的
にも、全てが満たされた状態にある事。」と定義しています。
仙人のような世間と隔たった環境では、100%満たされているとは言えませんね。
過度のストレスは病を増長してしまいますが、ある程度のストレスは、体や心にと
っても良い刺激であるスパイスになるのではないでしょうか。
著 者:信田広晶
出版社:KADOKAWA