人生の岐路に立たされた主人公達を見守っているような、そんな感覚で読め
る8編の短編小説です。
タイトルの「おまじない」は、訳が分からないような分かったような、摩訶
不思議な呪文を唱えるようなものではなく、全編を通して主人公たちに投げ
かけられる、密やかな「お守りの言葉」のように感じられました。
その「お守りの言葉」を受け止める主人公たちは、
思春期に直面した中学生の女の子だったり、
どんな時も“あねご”を演じ続けなければならなかった20代の“ババァ”だったり、
打ち解けられなかったおじいちゃまと秘密結社を結んだ女子小学生だったり、
己の人生を演劇に捧げ続けてきた四十路の女性だったり、
個性的過ぎるが故に疎遠になってしまった三世代の女たちを親族に持つ高校生
だったり…
と、周りと自分の間に見えない水槽や膜やフィルターのような違和感をいつも
感じている“女性たち”です。
そして、その女性たちに「お守りの言葉」を唱えるのは、“男性たち”です。
その男性たちが投げかけた言葉を自分の「おまじない」として受け止め、救わ
れた主人公たちに今度は見守ってきたこちら側が肩を叩かれたような気持ちに
なりました。
弱い自分を認め、そんな自分をも好きになり、強くなっていく。
この主人公たちのように言葉の中に隠された「おまじない」を見つけ出せる
感受性を保っていきたいと思いました。
文末の、作者の西加奈子さんと長濱ねるさんとの対談も必読です。
著 者:西 加奈子
出版社:筑摩書房