フランソワーズ・サガンという作家をご存知でしょうか?
世界的に有名な、フランスの作家。代表作は、『悲しみよ こんにちは』。
このぐらいであれば、パッと答えられる方も少なくないと思います。
ただ、サガンの人生や、その生き方はあまり広くは知られていません。
サガンが『悲しみよ こんにちは』を書いたのは十八歳の時でした。
十代で莫大な印税(約364億!)と世界的な名声を手にした彼女の人生は、その後、
生死の境を彷徨う事故、二度の結婚と離婚、最愛の人との別離、コカイン所持による
逮捕、晩年の経済破綻、と、実に波乱万丈なものになってゆきます。
かろやかで陽気、そして破天荒なサガンの人生。
本書は、サガンの人生と作品、彼女がのこした言葉を織り交ぜながら、彼女が重視し
たものを私たちに教えてくれます。
「やさしさのない人とは、相手ができないことを求める人です。」
「理解するというのは見逃すこと、よけいな口出しをしないことです。」
「私が孤独になっても息子にはどうしようもないし、彼が孤独になっても私にはどう
しようもありません。ただ、お互いに最善であろうとするだけです。」
彼女はなによりも「知性」と「個人」を重視し、孤独と愛を書き続けました。
1995年、60歳。コカイン使用・所持で有罪判決を受けたサガン。
激しく攻撃するマスコミの前で、サガンはこう言い放ちました。
「破滅するのは私の自由です」
慣習への盲従や、集団狂気を徹底して嫌ったサガン。
サガンの人生は、決して「よい子のお手本」ではありませんが、教科書的でないから
こそ、彼女と彼女の作品は多くの人を魅了し、夢中にさせるのでしょう。
サガンは知性の人であり、愛を、やさしさを、自由を求めた人でもあります。
サガンの作品を読んだことがある方はもちろん、人生がもつ重力に煩わしさを覚えて
いる方、孤独にさいなまれる方にもやさしく深く響く、おすすめの一冊です。
著 者:山口路子
出版社:大和書房