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ツチハンミョウのギャンブル

 「ツチハンミョウ」が昆虫の名だとご存知の方は、かなりの博識か相当な虫マニア

 であるとお見受けします。

 この表紙に描かれた虫こそが、ズバリその「ツチハンミョウ」なのですが、このタ

 イトルからその意味をすべて理解される方はそうはいないはずです。

             

 さて本書は『動的平衡』などでお馴染みの科学者である福岡ハカセが、雑誌「週刊

 文春」にて連載されていたコラムを一冊にまとめたものです。

         

 そんな本書のまえがきあけのコラム冒頭は「ある産科医の物語」から始まります。

 なんとも数奇な運命を辿る産科医のお話は、てっきり福岡ハカセの知人のことかと

 思いきや、これがどうして、いつのまにやら円周率に繋がっているのです。

         

 理数に強い方の中にはもしかしたらピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、

 全くちんぷんかんぷん、という方もどうぞご安心ください。

 読めばちょっぴり拍子抜け、ですが数学に対して少し親近感を持てるはずです。

        

 と、こんなおはなしから始まって、スイカやコインロッカーなど身近にある事物や、

 芸術や本、グルメや映画や社会情勢、一般人ではあまり知り得ないノーベル賞の裏

 話に至るまで、当時の福岡ハカセの拠点であった東京とNYを舞台に、その時々に

 ハカセに起こった出来事や思い出について幅広く書き綴られています。

           

 もちろん福岡ハカセの大好きな昆虫のエピソードもふんだんに盛り込まれています

 が、こちらもストーリー性をもって描かれていて、たとえ虫が苦手であったとして

 も、その世界観についつい引き込まれてしまうこと請け合いです。

 ただ、そのリアルな生態を知ってますます苦手になってしまう可能性もあります…。

           

 また大の「フェルメール・オタク」としても名を馳せる福岡ハカセ、本書でももち

 ろんフェルメール愛をいかんなく発揮し、その魅力についても熱く語られています。

                 

 どんなジャンルのお話も、福岡ハカセのサイエンスのフィルターを通すことで、こ

 れまで見ていたものが違った見え方をしはじめ、難しい事象も具体的にイメージし

 やすい物に置き換えて説明されていたりするので、理数系が不得手であってもとっ

 つきやすく、とても興味深く読むことができます。

     

 ・・とはいえ理数がさっぱりの身としては、なんとなく雰囲気だけで知ったふりを

 して読み流した部分が多少あったという事実は否めませんが。

             

 かくしてこの本のタイトル「ツチハンミョウのギャンブル」も、数あるコラムの中

 の1つなのですが、表紙に美しく描かれたこの昆虫の一生を知り、これをタイトル

 に選んだ福岡ハカセの想いも感じながらぜひご一読ください。

          

          

 著 者:福岡伸一

 出版社:文藝春秋

         

       

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 2021年9月の新着図書です。

 

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