ジョン・フォン・ノイマンという科学者をご存知でしょうか。
かのアインシュタインをして「世界一の天才」と言わしめた人物であり、同時に、
「人間のフリをした悪魔」とも呼ばれる、20世紀最高にして最恐の天才科学者です。
コンピュータ、ゲーム理論、天気予報、そして、原子爆弾の開発──。
私たちの生活と人類史に多大な影響を及ぼしたフォン・ノイマンという科学者が、
どのような人生を歩み、どのような価値基準でもって世界を見ていたのか。
本書は、その生い立ちや周囲の人間との関わりを元に、ノイマンがどういった人物
だったのか、また、その思想の根底にあった「主義」とはなんだったのかを浮かび
上がらせています。
歴史には、時として、「人間よりも進化した生物」としか思えない傑物が現れます。
フォン・ノイマンは間違いなくそのうちの一人であり、その傑物が「人間性」を
切り捨てたとき、世界がどのように変容していくのか。
そもそも、「人間性」とはいったい何を指すのか。
「実現可能な力を持っていること」と「実行すること」の境目を飛び越える可否は、
決して善悪の二元論では語りえません。
自分自身に深く問い直す契機ともなる一冊です。
ノイマンは53歳でこの世を去りました。
核実験に立ち会った際に浴びた放射線が原因だと言われています。
もしノイマンがあと30年生きていれば、私たちが生きる世界の姿は今とはまるで
違った姿になっていたかもしれません。
著 者:高橋昌一郎
出版社:講談社