著者は、当図書室でも人気の朝井まかて氏。
北斎の娘、葛飾応為の物語です。
心揺さぶるものに出会った時、「この瞬間を残したい」と人は思います。
そしていつの世も、その出会いを物語や立体物や絵画として残さずにはいられない人が現れます。
どこまで行ってもすべてを写し取ることはできない、というジレンマと闘いながら、芸術は生みだされてきました。
本作の主人公、応為もまさしくその一人。
女性ゆえ、さらに険しい道を歩みながらも「江戸のレンブラント」と呼ばれる独自の画風を生み出す過程が生き生きと語られます。
読んだ後は、物語に登場する作品を検索してみてください。
「三曲合奏図」の色遣いや、ホッパーの名画「ナイトホークス」にも通じる「吉原格子先図」の、人間の内面までも描く光と影を目の当たりにすると、本書の楽しみ方は何倍にもなるはずです。
著 者:朝井まかて
出版社:新潮社