「エントロピー増大の原則」に従い、すべての物の秩序は、時の経過と共に乱雑になる方向に進みます。
生命体は、自らを常に分解し更新と交換を繰り返すことで、この法則と対峙して釣り合いをとる、これが書名にある動的平衡です。
遺伝子や癌と免疫等についての記述が多いのですが、身近な物に例えて書かれており、文系の方にもわかりやすい内容です。
そもそも、文学、音楽、芸術に造詣が深い著者にとって、理系、文系の分類こそが無意味かもしれません。
今月は「ほの暗い永久から出でて」も紹介しています。
この2冊には、奇しくも同じテーマが出てくる箇所があります。
生命について科学的解明が進んでも、立場が異なる3人が問いかける「人はなぜ生きるのか、そしてなぜ物語や音楽を生み出すのか、なぜ芸術が必要なのか」という答えはまだ得られそうにありません。
著者:福岡伸一
出版社:木楽舎