表紙は、先ごろ兵庫県立美術館の特別展にてお目見えした「レディ・ジェーン・グレイの肖像」。
政権争いに利用され、たった9日間の女王だったジェーンが16歳で処刑される直前の様子が、見る者の悲しみを誘う一枚です。
本書には他にも、残虐なサイコパス度が極めて高い人物ではなかったかと言われるヘンリー8世や、カクテルの名前にまでなったメアリ1世、「イギリスと結婚した」という言葉を遺したエリザベス1世、また近世では、シンプソン夫人との恋により王位を譲り渡したエドワード8世などなど、英国史の立役者が並びます。
表紙の絵は、必ずしも史実に忠実ではないそうです。
王室御用達画家による肖像画は実物を美化したものもあるでしょう。
それでも尚、絵画は出来事の本質や人物の真実を描きだしています。
どんなドキュメンタリーフィルムよりも雄弁に歴史を語る、絵画にはそんな力があることを強く思い知らされるのです。
著者:中野京子
出版社:光文社