当図書室のお得意分野、「美味しい食べ物のエッセイ」です。
「食文化」の棚には同様のエッセイがたくさんありますが、
食べ物の話を書くのは結構難しいと実感します。
高級フレンチであろうと卵かけご飯であろうと、まず、読み進むうちに
「美味しそう!食べてみたい」と思わせることが不可欠です。
著者自身が料理好きだからこそ描ける内容もあります。
柚子の季節には、ポン酢、ジャムと柚子仕事にいそしむ著者ですが、
グルメを気取るのではなく、冷蔵庫にいにしえの珍味類を貯めてしまうところも
安心して読める要因でしょうか。
人生の折々で、思い出と共に食べ物はあります。
時には楽しく、時にはちょっとせつない思い出の数々。
本書を読むと、食べ物に関わる幸せな記憶がよみがえります。
故安西水丸氏のイラストも味わいながら読み終えた頃、
あなたはきっとお腹がすいているはずです。
著者:平松洋子 画:安西水丸
出版社:文藝春秋