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短編画廊 絵から生まれた17の物語

 エドワード・ホッパー

 20世紀を代表する画家の一人であり、激動のアメリカ史を生き抜いた画家でも

 あります。

      

 しかしながら、どのように時代背景が変動していったとしても、画家の眼は、

 都会の片隅や小部屋の情景、田舎の風景に向けられており、その筆致はあくま

 でも陰鬱な程に静寂であり、描かれた光と闇の対比が、街や部屋の灯りによっ

 てそこに登場する人物たちの孤独や不安の影を浮き彫りにしているかのような

 錯覚さえ覚える程です。

           

 ホッパーの絵は、写実的でありながら、人物の表情がぼやけています。

 孤独と不安の中に身を置いているというよりも、孤独と不安の背景の一部とし

 て存在しているかのような印象も見受けられます。

       

 まるで、「この人物が抱えている謎を解いてみろ。」と、ホッパーが見る側の

 私達に挑戦してきてるかのようです。

     

 そして、そのホッパーの「謎」の世界観に惹かれ、インスパイアされた17人の

 米作家達がそれぞれに選んだ絵を題材に小説を書き下ろしたアンソロジー集が

 この「短編画廊」です。

 ホッパーの画集でありながら、珠玉の小説も楽しめる贅沢この上ない1冊になっ

 ています。

        

 この絵からこんなストーリーがよく生まれてくるなぁと、作家陣のその豊かな

 想像力に感心しながら読み進めていきました。

      

 書かれた人物たちも、片田舎の冴えない映写技師、「新しい仕事」を始めた夫

 婦、道化師、夫に虐げられ続けられている妻、大都会に出て身を立てようとす

 る女性、無神論者の牧師、ソ連軍の将軍、など、多種多様です。

        

 殆どの話が、ホッパーが描いた時代に沿って書かれている為、セクシズムやバ

 イオレンスやレイシズムなどが当たり前の日常として横行していた時代だった

 んだなぁと、改めて気づかされました。   

           

 その様な中でも、不条理な日常に屈服しないマイノリティたちの逞しさに胸が

 すく思いがしました。

       

 好き嫌いは別として、「モダンホラーの帝王」スティーヴン・キングのゾッと

 する話が、1番鮮烈でした。

     

 好きな作家の話から読むのも、好きな絵から読むのも、どちらからでもお勧め

 です。

 この画廊のホッパーの17点の作品を、どうか心ゆくまでご堪能下さい。

            

       

 著 者:ローレンス・ブロック、スティーヴン・キング、ゲイル・レヴィン、

     ミーガン・アボット、ジェフリー・ディーヴァー  他

 出版社:ハーパーコリンズ・ジャパン

        

       

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 2021年9月の新着図書です。

 

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