イギリス在住のコラムニストのブレイディみかこ氏と、日本在住の演劇家の
鴻上尚史氏との、西と東の論客が双方の国の「今」を語り合う対談集です。
お二人の話題は国や政治や教育だけに収まらず、個人レベルでの比較もあり、
目を丸くするような話題に好奇心をくすぐられつつも考えさせられる面が多く
ありました。
奇しくも対談の時期がコロナ発生の前と後の二部構成になっていて、イギリスに
於いてはEU離脱の混乱とも重なり、大きな変化の荒波の中で国民がどのように
現状を受け入れ、対応していったのかを垣間見る事が出来ます。
激動のイギリスに対して、国民の意識も学校教育も物価も何も変わらない日本の
事を、鴻上氏は「竜宮城の浦島太郎」と揶揄してはいますが、必ずしもイギリス
礼賛の本ではありません。
「日本は安全な国」「イギリスは自由な国」
どちらの良さもあると述べられています。
本書の中でキーワードのように語られている言葉
「シンパシーとエンパシー」「多様性」「世間と社会」
今、求められている相互扶助の考え方の答えがこれらのキーワードの中にある
ように感じました。
竜宮城に留まる事が幸福なのか、勇気を出して玉手箱を開ける事が幸福なのか、
この本は玉手箱の紐の存在を教えてくれたように思います。
著 者:ブレイディみかこ×鴻上尚史
出版社:朝日新聞出版