世紀末のヨーロッパ、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」と挿絵を
描いたオーブリー・ビアズリー、彼の姉で女優のメイベル・ビアズリー
を描いた物語です。
挿絵画家としての活動は5年間だったとは信じがたい程、強烈な絵。
読みやすい文体の原田氏ですが、「たゆたえども沈まず」のゴッホと
本作のオーブリーの人生は読むのが苦しくなりました。
両者の絵を見る者は、画家と同じ苦しみを味わってしまうからかも
知れません。
本書では、場面が大きく変わるたびに真っ黒いページが挟まれています。
物語の初めでは、舞台が始まる直前暗くなり、開演のブザーが聞こえる
かのよう。
最後は、ワイルドの書いた戯曲に関わる3人の舞台を見終えたように
感じました。
著 者:原田マハ
出版社:文藝春秋