突然現れた女性と小学生を、北海道から熊本まで車で送ることになった主人公。
3人が旅する理由は?そして結末は?
著者の「東京バンドワゴン」シリーズに出会った時、1970年から1980年代のホームドラマのようだと思いました。
大家族の日常を小さな事件も交えながら描き、ハッピーエンドに幸せな気分になって次回を楽しみするようなドラマです。
一家揃ってテレビを囲んだ時代でした。
本書の登場人物は、大家族でもなく、実際の家族でもありません。
時代が変わり、家族の形態は変わりましたが、著者の描く世界は変わりません。
プロットを綿密に練ったミステリーや、現代の暗部を描いた小説に慣れた方には、少し物足りなく感じるかも知れません。
けれども、こんなふうに温かい気分になれる作品も間違いなく必要だと、読むたびに思えるのです。
著 者:小路幸也
出版社:祥伝社